小坪神楽を見てきたど〜 -呉市無形文化財-

中新開に住んでいる私にとって、長浜と言えば泳ぐ場所。小坪と言えば…。あんまり縁が無かった。小学生の頃、大の親友だった中道クンが小坪に引越しちゃったんで、遊びに行ったことはあったけれど、それ以外はあまり知らなかったってのがホンネでした。

そんな私に小坪神楽の存在を教えてくれたのは、ホームページ開設まだ間もない99年1月に頂いた、カメラマンひろとさんのメールでした。呉市無形文化財にも指定されている神楽があるから、見に行ってみたら…。
行きたいなぁと思いつつも、開催される日が分からなかったり、どこでやってんのかすら分かんなかった。

掲示板での皆さんとの交流の中で、ようやく開催日と場所が理解できたので、取材に訪れたのは、それから6年以上経過した2005年10月22日のことでした。

なお、以下の記事中で紺色で書いてある文字は、小坪神楽の指導をされている、かー さんよりお寄せ頂いた情報です。

この日は、広の祭りと同じ日ってこともあり、神輿行列と一緒に歩いてたりしたので、小坪神社下に到着したのは既に真っ暗になった19時過ぎ。

薄暗い中、ぼんやりとした街灯に照らされた石段を登り、境内に至る。既に神楽は始まっており、笛太鼓の音が聞こえてくる。

神楽は神社本殿の中で行なわれており、広くない本殿には既に多くの人が溢れかえり座る場所が見当たらない。

オロオロしていると、先に来ていた立っちゃんさんが手招きして呼んでくれて、よくやく場所を確保。

画像右手に御神体が見えており、笛太鼓は左奥に…

この画像は、「だいば」を舞っている様子。

1 神楽 11 だいば 神楽には21種の舞があると。

それぞれに意味があり、また舞う人数も1人で舞うものから、5人で舞うものまであり、衣装や道具も変ってくる。

8の「たくさ」までが「儀式舞」で以降が「形式舞」です。「儀式舞」は神を迎え神に神楽を奉納する意味を持つ舞です。
「形式舞」はお迎えして後は大衆と事を楽しむ、所謂「余興」みたいなものです。

2 露払い 12 下二刀
3 しめぐち 13 おしき
4 岩戸 14 後舞
5 神迎い 15 長刀(なぎなた)
6 二天 16 せんす
7 小弓 17 大弓
8 たくさ 18 えびす
9 上二刀 19 住吉
10 四天 20 いこく
21 新宮

この21種の舞を2日行います。(1日に21種舞い、2日目も21種舞うそうです)

太鼓は4人が並んで打ち鳴らし、横笛を吹く人も20人以上は居るかな?

狭い本殿に響き渡ります。

舞と舞の間に、おじさんが登場してきて何かを読んでいます。

早口で読まれるので、何と言っているのかが聞き取れないのですが、何かご寄付を頂いたことの披露のようです。

あれは「東西、東西、華のひごろう仕ります。目録正金で○○円、人気沢山ご贔屓とありまして○○様より舞子拍子方惣太中に下されます。」と言っています。所謂「花代」です。花代は小坪神楽奉納の運営するための寄付金みたいなものです。
昔は、「舞子拍子方」の部分が舞子の個人名で、舞子の出ている家では親類縁者を回り「花」を付けてもらうように頼んでいたそうです。
未婚の女性からの「花」は気をきかせて名前を記入しても口上では「さるかた様より」として発表していたそうですよ!
舞子は祭りが終わると、自分宛の紙をもらいその枚数の多さで競い、誇りに思ってました。その紙をもらっても自分に入るわけでもないんですよ。

長刀(なぎなた)の舞。

途中で、歌舞伎で言うところの「おひねり」みたいに、演じている青年に対してお菓子を投げつけたり、持たせたり、お札を頭に挿したりするのには驚いた!


長刀を舞う舞子が「願わくなら宝剣の剣を振らして食べたまえんや」といって恵んでください。と言っています。

脇に掲げられた舞子の方々のお名前を見ると、女性のお名前もある。私が見ていた間には女性は登場しなかったが、女性も舞ってたなら、見てみたかったな…

以下、かー さんに幾つか質問してみました。

Q1.掲示板の方で舞子がお気に入りの女性を追いかける云々とありましたが、どの部分でどのような意味があるの?
A1.20の「いこく」です。この「いこく」は朝鮮出兵のお話なんです。そこで3人鬼が出て来るのですが、その鬼に見立ててお客を捕まえるんです。

Q2.演じている方々は毎年変るの?
A2.人がやめれば新しい人が入るといった感じです。だから昔の人は舞いたくても舞えなかったのです。今は最後の「いこく」を舞うと引退っといった感じになってますが、だんだん小坪の若者が居ないってことで今頭を悩ませてるといったことろが正直なところです。

Q3.神楽を舞う際の衣装がとても綺麗でした。また、装飾類がとても新しいものだと感じたのですが、ここ最近衣装を新装されたの?
A3.衣装は昭和44年に新装したものです。よく見ると結構痛んでますよ。激しい舞とかするのですぐです。たまに島根に衣装を持って行き直してもらったりしています。

Q4.そ神楽の面白いところとか、豆知識などありましたら、お教え下さい。
A4.我々の瀬戸内近辺の神楽は県北部の神楽と違い地味ですが、県北のものとは違いステージで完璧を求めないといったとこでしょうか。(もちろん魅せるといったことも大事ですが県北みたいにあっちこっちでやるショーではないので)もちろん舞子は真剣にしています。
ステージとは違い、たった1坪のムシロの周りにはお客が居ます。その中で舞を舞うわけですから醍醐味もあるし、何らかのアクシデントもたまにあります。そのなにが起こるかわからないのがいいんじゃないのかと。祭りということもあり、お酒も入ってる方々もいらっしゃいますので、多少それなりのことは起こることもあります。
神楽を本当に楽しむなら神楽「形式舞」の『四天・だいば』『いこく』などの物語、舞子が語る昌行などもじっくり聞くとおもしろいですよ!
これからは20日に近い土日だったのが、10月の第三日曜日と固定されますので、皆さん機会があれば是非小坪神楽を観に来てください。

小坪神楽を動画でご覧いただけます。(部分的に抜粋してます)
ココをクリックしてね(WMV形式、8分57秒)

後日、小坪神社に明るい時間帯に撮影に訪れました。神楽を紹介した、いつもの鉄板があるので、ここでも撮影。

呉市指定文化財 第23号 無形文化財 昭和44(1969)年10月1日指定
小坪神楽 KOTSUBO KAGURA 

 小坪神楽は、言い伝えによると、江戸時代に大三島の大山祇(おおやまずみ)神社の神楽を習い覚えて、小坪八幡宮の秋祭りで舞ったのが始まりとされています。地元青年団の手によって毎年祭礼で奉納され、その後自治会へと引き継がれながら、地域が一体となって伝統を守ってきました。神楽は神を招き、神の心を安んじるために祭式の始めに行う儀式舞と、神の降臨(こうりん)がすみ、神前で大衆と和楽(わらく)するために演じて見せる形式舞の併せて21種目が上演されます。
 神楽を舞うのは、小坪地区在住の青年で、以前は男性が舞っていましたが、昭和60年からは女性も加わるようになりました。囃子(はやし)の笛は小学校5・6年生及び中学校の生徒が担当し、毎年、10月20日に近い土曜日の夜と日曜日の午後の2回、小坪八幡宮で奉納されます。
呉市教育委員会

長浜の祭りも良かったけれど、小坪神楽も本当に素晴らしいね。これだけの伝統を地域一体で守り伝えて行くことは、関係されている方々にとってはご苦労も多いことでしょう。けれど、とても素晴らしい伝統です。地域の誇りとして、末永く伝えて行ってください。来年は最初から最後まで見に行きたいな。

最後に、かー  さんには色々と校正などで大変お世話になりました。沢山お手数を掛けてしまったと思います。ありがとうございました。

撮影:2005年10月22日
作成:2006年4月8日