ヒロビシ醤油醸造元 直撃取材

醤油とは日本人の魂なのか…

醤油の原料、大豆のことを英語では"soybean"と言ふらしく、直訳すれば"醤油豆"ってとこか。醤油はおよそ日本人にとって無くてはならない調味料のひとつであろう。家庭の味、お袋の味の源はその家庭で代々使用している醤油の味がDNAに刻み込まれており、そこから発する味付けに起因しているに違いない。だから、母の味を食べ続けた娘は、違う土地に嫁いでも実家と同じ醤油を使い続けるのではなかろうか...

さて、講釈はさておき本題に入ろう。

2004年6月26日。土曜日のこの日、連日の豪雨が続く中、ワタシ(こなき)と、レインコートを着た女性の2名は吉松のとある場所にクルマで乗り付けた。入口の看板には「重本醤油醸造元」と書いてある。
そう、今回は吉松にあるヒロビシ醤油の醸造元である、重本醤油醸造元さんに取材である。

レインコートの女性は、メーリングリストにも登場頂いている「色さん」である。赤青黄色さんはここ重本さんと親戚関係にあるらしく、醸造蔵の取材を取り付けて頂いた次第である。

重本醤油醸造元さんの屋号は「ヒロビシ」である。私の実家も幼い頃よりずっとヒロビシ醤油を使用していた。今でも実家の水屋にはヒロビシさんから頂いた皿が何枚もある。

早速、蔵の中に入りお話しをうかがう。本日お話をうかがうのは社長の重本 孝さん。
(プライバシーに配慮してお顔は伏せさせて頂きます)

独特の「濃い醤油の香り」が漂っている。良い香りである。

入ってすぐに目を引いたのがコレ。

この日は瓶詰めなどは行われておらず、午前中一杯は、回収瓶の洗浄を行うとのこと。

見るからに「一升瓶を洗う装置」である。幅2メートル程の八角形の装置はステンレス製であり、スチームのごう音とともに次々と瓶を洗い上げている。中の瓶は天地を逆の状態で機械に二列でセットされ、時計方向に順次回転している。未洗浄の瓶は向かって左側へと姿を消し、それに引き続き右側より内部をキレイに洗われ、古いラベルもはぎ取られた姿で湯気を立てながら出てきた。

キズの入った瓶はこの洗浄の段階で割れてしまうそうで、0.2%ほどの割合でボツってしまうそうである。

 

しかし、洗いたての瓶はかなりの高温になっているだろうに、軽々とそれを素手でつかみ、左図のラックに収納して行く。

洗い上がった瓶はラックに蜂の巣状に次々と収納されていた。この状態で300本の瓶が納まっているとのこと。下の方の瓶には上の瓶の荷重が全て掛かっているのに割れないので、瓶は意外と荷重には強いのかも。

ちなみに、洗浄作業をされていたのは息子さんの重本 一成さん。製造から配達まで担当されているとのこと。

一升瓶洗浄装置の奥の方にはパッと見には、どこかのプラントのような樽が並んでいる姿が目に入る。

樹脂はFRP製かと想像される。

ご主人の説明によると、ヒロビシさんも以前は木の樽を使用していたけれど、現在はより衛生的なこのような樽を使用されているとのこと。

また、今回撮影はしなかったが、火入れも釜を火で炊いて醤油を加熱するのではなく、チタン製の「熱交換器」のような驚くほど小さな装置の内部を醤油が循環することにより、加熱するとのこと。

伝統的な醤油醸造元 と言われれば、木の樽や大釜で炊く姿を連想してしまうのは浅はかであると言うことを知った。工程はかなり近代化されている。手造り = 昔ながらの製法がベストなのではなく、常に良いものを探究して行くご主人の姿勢がうかがえる。近代化 = 味気なさとは短絡できないと痛感する。

一般的な(他社さんの)醤油製造工程はココから検索できます。

蔵の片隅にこのような滑車があった。

往時はこの滑車を使用して醤油造りをしていたそうであるが、使われなくなってかなりの年月を経ているようである。

梁(はり)も立派だな。

ベースとなるもろみを元に様々な工夫を凝らしたり、企業秘密の「味付け」をしたりして10種類ほどの商品レパートリーがあるとのこと。ご主人曰く『食や味覚の変化に合わせたおいしい品造り』の成果でこれだけのレパートリーが揃ったとのこと。今思い起こせば、私が子供の頃に目にしていた醤油瓶には「銀」の文字が記載されていた。と、かすかな記憶が甦る。
では、以下に実際の商品を紹介する。

醸造蔵の横には店舗があり、ここでヒロビシの醤油が販売されている。

 

上の各商品が並んでいる様子を見て不思議に思った。一升瓶のフタが違う。

「手造り」と「きぢ」は左の日本酒と同様のキャップで、それ以外の醤油は右のようなキャップである。金属製のキャップを外すとその下には乳白色のビニール製のキャップが入っている。

訪れた日に店頭で売られていたそれぞれの商品のご紹介。画像は一升瓶の肩に貼られた製品ごとのラベルです。


価格(税込) 価格(税込)

手造り

\970 \725

きぢ

\900 \640

\795 \570

淡口 \660

帰り際に店頭で販売されていた「さしみ醤油」を買って帰った。
ヒロビシの他にも「フジコ」の商標でも販売しているとのこと。

家に帰って開銓すると、濃い醤油の香りがする。あの、醸造蔵で嗅いだあの香りである。およそスーパーなどで販売されている大手醤油メーカーのさしみ醤油よりも確実に味も香りも濃い。

重本醤油醸造元さんのご主人、奥さん、息子さん、取材させて頂きありがとうございました。お忙しい折に、ゴチャゴチャと外野が仲介してしまい申し訳なかったです。大手の醤油メーカーの大量生産品に負けず、今からも良い商品を作り続けてください。

また、今回の取材と記事構成に多大なるご協力を頂いた赤青黄色さんにも大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

最後に…
初対面の息子さんに私の名前(姓)を告げると、下の名前(名)を言い当てられてしまった。恐るべし広町。

作成:2004年7月3日