広町全域緊急断水の巻

2004年7月12日…
この日の出来事はしばらくの間は広町界隈の人々の記憶に残る日になったであろう。今後の自戒の意を込めて、この記事を残しておくことにしよう。

12日は月曜だった。ここんとこ暑い日々が続いており、私は夜に風呂に入ることなく朝の起き抜けにシャワーを浴びる習慣になっていたので、この日も朝6時の起床直後にザッとシャワーを浴びる。6時15分頃にはもう下着は身に付けていたと記憶している。6時半に家族を起こし何気なく台所の蛇口を開いた瞬間に、この日の騒動はスタートした。

蛇口を全開にしても、糸の様なほんの少しの水しか出てこない。断水か?子供達の洗顔用に、そのか細い水流をボールに溜めつつ、くるぱんに「近所の奥さん、数人に携帯メールで状況を確認してみて」と伝えると、回答はどこも同様らしい。これは範囲が広いな。

7時過ぎに町内放送が聞こえる。芹洋子の「四季の歌」のイントロ(春を愛する人はぁ〜♪)がいつものように聞こえる。それによると、阿賀方面で送水管が破断し広い範囲で断水。給水車での給水が開始されるとのこと。おぉ〜。

その後、私は会社に行ったが、くるぱんからは逐一、街の様子が携帯メールに届いてくる。

「藤三ではみんなが殺気立った様子でミネラルウォータを箱単位で買っている」
「ナフコからエスカレータで降りてくる多くの客は、青いポリタンクを買い占めている」

掲示板でも多くの方が、町の様子をレポートしてくれている。

で、こんな時に呉市水道局のホームページを見てみたりする。トップページに状況が逐一更新されている。なかなかやるな。ちょっとは役所を見直した。

くそー。なんでこんな日に仕事してんだオレは。絶好の取材日和ぢゃないか(~_~)
で、くるぱんにデジカメで適当に撮影しといてね。と頼んだのが下の二枚。


コレは、広小学校の給水車待ちの人の列。11時15分撮影。


この列の先頭にあるのが、この給水車。

会社は呉の旧市街地にあるので、今回の断水の影響は全く無い。
気になって。ウソ。街の様子をデジカメで撮影したくて、ウズウズして定時直後に職場を後に。その後、一度自宅に帰り、デジカメ片手に色んな場所を徘徊。

広支所前の給水場所の様子を18時48分に撮影。給水している車両の左側のは、川尻消防団のものであった。

皆さん、手に手に色々な容器で給水を受けている。その色々さが事の性急さを物語っていると感じた。
印象的だったのは押入れなんかに入れる、乳白色のプラスチック製衣装ケースになみなみと水を入れてもらい、自転車の前カゴの上に載せて帰ろうとしてバランスを崩してこの時期に貴重な水をぶちまけていた人かな。

サンデーサン広西店を18時50分に撮影。当然、店内は真っ暗で店頭には営業不可の貼り紙が。

ドラッグストアーでは、国道沿いにこのような看板を出し、水の在庫をアピール。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の図式だな。

ちなみに古新開にある湯楽利では、午後6時頃より通常料金の半額で入浴提供し、多くの人でごった返していたそうな。

続いて、広公園に行ってみる。ここには緊急時のために地下に貯水タンクがあることは知っていたのでさぞ多くの人が来ているに違いない。
この貯水タンクは、正式には「耐震性貯水槽」と言うらしく、ココで詳しく説明されている。

非常時 = 停電時と言う想定からであろう。ポンプは手回し式であり、給水担当の方もかなり大変そう。
応援の給水車は広島市水道局からも。

この列の中に知り合いの奥さんが居て『エェねぇ。高見の見物?』って言われてしまった(^◇^;

スミマセン。ホームページのことしか考えてなくて...

次に、広小学校に戻ってみると、長い給水車待ちの列が出来ていた。

列の先頭に居たおばちゃんに、「広公園に行けば地下タンクがあって、そこから人力ポンプで汲み出している。ここで、いつ来るか分からない給水車を待つくらいなら、あちらに行ったら」と言うと、「そのタンクの水は飲めるんかいねぇ?」とな┐(゚〜゚)┌。挙句の果てには「こんな機会も滅多に無いんじゃけぇ。まぁ、ここで待ってみるわ」とすっかりお祭りの様相である。

自衛隊から派遣されたであろう服装の若い兄ちゃんと朝陽館のおじちゃんが口論していた。
どうやら、朝陽館の道路に面した屋外の水道は細々ながらも水が出るそうである。おじちゃんは「白石循環線の道路の下には水道の太い本管が通っており、ここの蛇口はその本管に近く、比較的低い位置にあるから出ているのではないか」と。

その水を提供してほしいとか自衛官の兄ちゃんが言ったみたいで、しかし自衛官曰く「自分には判断権限が無い」とか口論の末、おじちゃんは水を提供することに決めたらしい。

結果、広小学校の列から数人は離脱して、こちらから水を頂いていた。

19時42分。待ちに待って、本日、何度目かの給水車がようやく到着。


夜のニュースで、送水管が破断して、大きな噴水のように水が噴出し、隣接するビルの3階まで水浸しになったと報道されていた。阿賀、広、仁方、川尻、蒲刈などまで影響し、2万世帯以上、8万人以上の生活に影響を及ぼしたそうな。参議院議員選挙の翌日にもかかわらず、全国版のニュースのトップで報道されたから驚き。

このビル、ミナトストアー。私の同級生の石田クンの実家である。余談であるが、石田クンは成人式で新成人の挨拶を喋ったのを良く覚えている。

振り返って我が身を案じると、幸いにも我が家には井戸がある。(家を建てた時に、先祖が掘った井戸を埋めてしまったので自責の念に駆られて自分が手掘りしたものです)深度が浅いから飲用は不可であるが、この時ばかりはトイレ用に流させて頂いてもお咎めは無いであろう。
「トイレ流水用にならば、ウチの井戸水を提供しますよ!」と、のど元まで出掛かっていたが、水質があまり良くないのでどーしても気が引けて言い出せなかった。
また、風呂はくるぱんの実家が安浦にあるので、ひとっ風呂頂きにお邪魔。途中のコンビニで食料を調達しようとしたが、どのコンビニも弁当類は売り切れであった(>_<)

翌朝(13日)、朝一番に蛇口を開くと勢い良く水が出る。ただ溜め置いてみると、まだ白濁しているので、飲用は不可っぽい。川尻方面では復旧がこれよりも遅れ気味だったと聞いています。水圧の関係でしょうかね。

日頃は何気なく使っている生活インフラ「水」。今回、多くの方々から「日頃は何気なく使っている水だが、有り難みを身を持って経験した」との声を聞きました。水だけに限らず、現代の生活は多くのインフラの上に成り立っています。これは、現代生活は薄氷の上に暮らしているようなものなのかも知れません。昔の生活は、自前の井戸に汲み取り便所、食料も畑から取れました。現代生活はこれら全てをカネで立替えて便利な生活に慣れてしまっています。果たして現代が良い時代なのかどうか。再考する時期に来ているのかも知れませんね。

また、同じ時期に福井では集中豪雨による甚大な災害が発生しております。実は、広町も福井の二の舞になの可能性があることをご存知ですか?黒瀬川流域での浸水がシュミレーションされています。これによれば、100年に一度の水害発生の際には広町のほとんどが水没してしまいます。我が家も...

他人事ではない危機管理。

今回思ったこと

作成:2004年7月20日