大臣からの手紙

あれから1ヶ月目の今日、中2の息子が学校から1枚の印刷物を持って帰った。

新学期を迎える皆さんへ
新学期を迎える皆さんへ

そのままを掲載します。

新学期を迎える皆さんへ

 皆さん、入学、進級おめでとうございます。
 皆さんは、この4月、希望に満ちた春を迎えるはずでした。
 しかし、この春は、私たちにとって、とてもつらい春になってしまいました。
 御存じのように、3月11日、あの未曾有の大地震と津波が日本を襲ったのです。
 皆さんの中にも、ご家族を亡くされたり、あるいはいまも避難所から学校に通ったり
している生徒さんがいることでしょう。
 避難所の中では、皆さんが率先して、お年寄りや身体の不自由な方を助け、掃除をし
たり、食事の準備をしたりしてくれているという話をたくさん聞いています。皆さんが
ボランティアで活躍しているという知らせも、たくさん届いています。本当にありがと
う。

 直接被災をした皆さん。皆さんは、十代のもっとも人間が成長する時期に、この大き
な試練に立ち向かわなければならなくなりました。
 いま抱えているすべての悲しみや不安から、完全に逃れることはできないかもしれま
せん。でもいつか、皆さんが、その悲しみと向き合えるようになる日まで、学業やスポ
ーツ、芸術文化活動やボランティア活動など、何か一つでも夢中になれるものを見付け
て、この苦しい時期を乗り越えていってもらえればと願います。
 学校は、あらゆる面で、皆さんが、この逆境を乗り越えていくためのサポートをして
いきます。

 災害にあわなかった地域の生徒の皆さんにも、お順いがあります。
 どうか、皆さんの学校にやってくる、避難してきた仲間たちを温かく迎えてあげてく
ださい。すぐ近くに、そういった友達がいなくても、遠く離れて不自由な生活をしてい
る同世代の友達を、伺じ仲間、友達だと思づてください。そして、被害を受けた仲間の
声に耳を澄ましてください。
 この大震災を通じて、日本国と日本社会は、大きな変化を余儀なくされます。この大
震災からどうやって国を立て直していくのか。自然と共生して生きてきたはずの日本社
会が、その本来の姿を取り戻すためには何が必要なのか。
 もちろん復興の過程では、「がんばろう」という元気なかけ声が必要です。しかし、
それと同時に、新しい社会、新しい人間の絆を作っていくために、大きな声にかき消
されがちになる、弱き声、小さな物音にも耳を澄ましてほしいのです。

 東北が生んだ詩人宮沢賢治は、科学と宗教と芸術の力で、冷害・凶作の多かったこの
東北地方の農民を、少しでも幸せにしようと考え、そのことに一生を捧げました。
 どうか、他人の意見もきちんと受け止めながら、自分で合理的な判断ができる冷静な
知性を身に付けてください。しかしそれだけではなく、他人のために祈り涙する、温か
い心も育んでください。そして、芸術やスポーツで人生を楽しむことも忘れないでくだ
さい。
 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』には、こんな言葉があります。
「僕、もうあんな暗の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさが
しに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう」
 賢治の言う「ほんとうのさいわい」とは何でしょう。この大きな災害と混乱の中で、
皆さんに、このことを考えて欲しいのです。
 もしも、それを皆さんが本当に真剣に考えてくれるなら、きっと皆さんは、どこまで
もどこまでも、一緒に進んでいけるはずです。そしてその先には、もっともっと素晴ら
しい新しい日本の国の姿があるはずです。
 忘れないでください。一緒に進んでいくのは、決して日本人だけではありません。今
回の東日本大震災では、世界中からたくさんの支援が寄せられています。また、この非
常時にあっても秩序正しく、理性を失わない日本人の姿に、世界中が驚き賞賛の声を揚
げました。私たちは、世界と共にいます。
 原子力発電所の事故に対して、危険をかえりみずに立ち向かう消防士や自衛官、電力
会社の人たちの姿。各地の被災地で、救命救急活動にあたった警察官や医療関係者、そ
して何より、本当に命がけで皆さんを守ってくれた学校の先生たちの姿を忘れないでく
ださい。そして、みなさんも、もっともっと身体を鍛え、判断力を養い、優しい心を育
んで、他人のために働ける人になってください。

 日本の未来は、皆さんの双肩にかかっています。
 あなたたちのその笑顔、ひたむきな表情が、いま家族や地域の人々を支えようと懸命
にがんばっている大人たちに、勇気と希望を与えています。
 私たちも、全力で、皆さんの支援に取り組みます。
 本当の幸せを求めて、一緒忙歩んでいきましょう。
                                  内閣総理大臣 菅   直人
                                  文部科学大臣 高木 義明

3件のコメント

  1. 大臣が書いたか、官僚が書いたかはともかく、
    綺麗ごとではなく、本当にそうだと思います。

    ちょっと目頭が熱くなってしまった。

  2. yoshiさんは…
    私とりも、もっと深く深くこの文章を読んだことでしょう。ありがとうございました。

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